先日、生徒から「産業革命は歴史で習うから有名だけど、それ以外に技術関係で革命はなかったの?」という質問がありました。そこで、以下のように回答してみました。
世界を変えるような革命は、大きく2つに分けることができます。
技術革新による生産性の向上
人口増加によって引き起こされる食糧問題の解決
この2つの分野において、革命が起こっています。
①技術革新による生産性の向上
技術革新はこれまでに四回起こっているとされています。
一回目:18世紀に起こった第一次産業革命で、これは石炭燃料を用いた軽工業の機械化を指します。
二回目:19世紀半ば~20世紀初頭に起こった第二次産業革命で、石油燃料を用いた重工業の機械化・大量生産化が可能となりました。
三回目:1970年代初頭に起こった第三次産業革命で、機械による単純作業の自動化が可能になりました。
四回目:2010年代から現在進行中の第四次産業革命で、AIを用いて機械による知的活動の自動化・個別生産化が可能となりました。
技術革命は大半の人にとって、現在進行中であるという感覚は少なく、後から振り返って「革命的な時期だった」と認識されることが多いです。現在、AIが一般人にも利用可能となってきており、これは人の知的活動を自動化するという非常に重要な出来事であると認識することが重要です。
生産性が向上した結果、人類の人口は爆発的に増加しました。1950年以前は約20億人程度だった人口が、2024年現在では80億人にまで増加しています。
人口が増加すると当然、必要な食糧も増えますが、何もしなければ食糧が二倍、三倍になることはありません。そこで起こったのが農業革命を始めとする食糧生産に関する革命です。
②食糧問題の解決
②-1:農業革命
農業革命は18世紀のイギリスで起きた農法改善で、畑に
・小麦
・地力を回復させる性質を持った栽培牧草(クローバー、サインフォイン、ライグラス)
・家畜飼料となる作物(カブ、ジャガイモ)
などを生産し、栽培牧草と放牧の相乗効果により、穀物、カブ、牧草と連続して土地を利用することが可能になりました。冬期以外は牧草栽培地にて放牧を行い、家畜由来の肥料で地力の回復を図り、牧草の枯渇する冬期はカブなどを家畜に与えました。これにより、冬に入る前に家畜を屠殺する必要がなくなり、生産性がさらに向上しました。
この新農法を行うためには、より集約された労働と広い耕作単位が必要であったため、効率的な農地利用を行う囲い込みが進められました。
この農業革命によって、第一次産業革命で増加した人々を飢餓から救い、十分な食料を供給できるようになりました。
②-2:緑の革命
緑の革命は1940年代から1960年代にかけて世界各国で、化学肥料の大量投入や高収量品種の導入により穀物の生産性が向上し、穀物の大量増産を達成したことです。
1913年、ドイツでハーバーボッシュ法が誕生し、従来は大量に入手できなかった窒素化合物が容易に手に入るようになり、農地用の化学肥料も大量に生産されました。多くの作物の面積当たりの収穫量が増えましたが、一定量以上の化学肥料を投入しても作物が倒れてしまい、高収量が得られないという問題がありました。
そこで、品種改良で作物の背が高くならない品種が開発され、従来品種では倒れてしまうことの多かった化学肥料の大量投入にも耐え、さらなる収穫量を実現しました。
この緑の革命による穀物の大量生産により、第二次産業革命、第三次産業革命に伴う人口増加にも耐えうる食料生産が可能となっています。
②-3:今後について
第四次産業革命に伴う人口増加が今も進行中であり、ピークで110億人まで増えると試算されています。緑の革命で可能となった穀物の大量増産だけでは、この人口を支えきれないため、これ以上農地を切り開き、化学肥料を大量投入することを繰り返すと環境破壊が進み、食物生産ができない土地が増えることから、新たな革命が期待されています。
代表的な例としては
・遺伝子組み換え作物、遺伝子組み換え家畜の利用
・培養肉の利用
・昆虫食の利用
があります。それぞれまだ問題を抱えていますが、これらが解決された時に新たな革命が起こる可能性があります。