生徒から「なぜ勉強をしなくてはならないのかがわからない」という質問をもらいましたので、その回答をまとめてみました。
僕はそもそも、楽しいと思えなかったり、必要がなければ勉強をしなくてもよいと思っています。勉強に全く興味がないなら、他の自分が好きなことに時間を費やして、その道のプロになる方が充実した人生を送れると信じているからです。
子どもたちも勉強には興味がなくても、自分自身の人生をどう生きるかにはとても興味があります。そこで、まずは子どもたちが将来どんなことをしていたいかを聞きます。回答は子どもたちの状況によって以下の3つに分かれます。
1. 明確もしくは暫定的な将来の目標がある
2. 目標はないが、大学に進学するのではないかという一般的な進路を思い浮かべる
3. 全く何も考えていない
1. 明確もしくは暫定的な将来の目標がある
この子たちは勉強をするかしないかの判断が明確にあります。そこで、勉強をしない場合には、その子の人生に勉強がどう役立つのかを伝えます。
昔、家庭教師をしていた子(仮名:はるき君)が、総合格闘技(その当時はRIZINがメジャーだった)に関わって生きていきたいと話してくれました。だから、アルバイトなどでその分野に入れればよいから高校を卒業できるだけでいいとのことでした。
はるき君は幼少の頃から心臓病を患っており、総合格闘技のプレイヤーとしては難しかったので、運営などの仕事をイメージしているようでした。
そこで、はるき君にもう少し深掘りして「RIZINを見ている時にプレイヤー以外で一番カッコいいなと思うのはどういう仕事をしている人なの?」と聞いたところ、彼は「リングドクター(リングの一番近くで待機していて、選手が倒れた時やケガした時の対応を行う)が一番カッコいいと思う」と答えました。
小さいころから心臓病でお医者さんにお世話になっていたり、お父さんがお医者様ということが関係しているのかもしれません。
この話を聞いたので、「どちらにしても格闘技関係に進むのであれば、今努力して医学部に進み、リングドクターになれる可能性を残しておいた方が良いのではないか」と提案したところ、はるき君は「確かにそうですね!」とハッとした明るい顔で答えてくれました。
それからは勉強に理由が見つかったからか、日々の勉強を積み重ねることができるようになりました。英語や生物以外は壊滅的だった模試も少しずつ改善していきました。
2. 目標はないが、大学に進学するのではないかという一般的な進路を思い浮かべる
この子たちは一般的な進路に進むことに対して抵抗がないので、どうせ大学に行くならどんなことをやりたいか、逆にやりたくないことは何かを聞くことが多いです。
昔、オンライン家庭教師で見ていた女の子(仮名:ゆうちゃん)は大学付属高校に通っていたため、大学に行くこと自体は本人の中でも決まっていました。
しかし、具体的な進路については全く考えておらず、当然なぜ勉強をするのかもわかっていない状態だったので、特に数学の成績が壊滅的でした。
大学には学部というものがあり、それぞれの学部でどんなことを学ぶのかをゆうちゃんに説明しました。その結果、彼女は以下のように答えてくれました。
面白そうだと思う学部:
- 法学部
- 経済学部
- 経営学部
- 国際系の学部
ゆうちゃん的には興味がないと思う学部:
- 理系全般
- 外国語系
- 文学系
そこで、面白そうだと思う学部へ進学するのに必要な成績を学校で確認すると、なんと全科目で平均約3.7以上が必要で、一年生の末でゆうちゃんは3.0しかありませんでした。これはまずいということになり、継続的に学ぶために以下のことを一緒に考えて実行しました。
- 自分自身の特性を知ること:どんな時、どんな場所なら勉強のスイッチが入るのか
- 自分を律する術:決めた時間に決めた場所へ自分を導きやすくするには何を変えるべきか
- 習慣を変化させること:つい見てしまうスマートフォンを勉強するタイミングで手放す為に何を出来るか
これをトライアンドエラーしながら進め、自分を成長させることができました。後半は得意になった生物で100点を取ることもあり、苦手だった数学でも50点以下を取ることはなくなりました。勉強が苦手という意識を克服し、今後の人生でも勉強のやり方がわからなくて困ることは一生ないと思います。
3. 全く何も考えていない
この子たちは今まで将来について考えることがなく、周囲の情報も入ってこなかったため、未来に対する情報が非常に不足しています。
これらの子たちと話すときは、まず好きなことや得意なことを聞き、それに関連する仕事がどのようなものかを伝えるところから始めます。
彼らがすぐに勉強に意識を向ける必要はないと思っています。まずは好きなことを本気でやること、そして好きなことを続けるためにはどんな情報を収集すればよいかを考える習慣をつけることを目標にしています。
好きなことを続けるためには教養や専門的な知識が必要であり、好きなことに本気になればなるほど勉強の必要性に気づくからです。
昔オンライン家庭教師をしていた男の子(仮名:じゅきや君)は、学校で問題行動を起こしたり、先生方に反抗的な態度を取ることが原因で親御さんが学校に呼ばれることが多い子でした。
当然、話をしたときも将来の展望などは全く考えていない様子で、「今楽しいことを適度にやればよい」という考え方でした。そこで、「どんな人生にしたいか?」と聞いても返事がなかったので、じゅきや君に
- やりたくないこと
- 得意なこと
をそれぞれ聞いてみたところ、
- 勉強をずっとする仕事
- 誰かに管理される仕事
はやりたくないということがわかり、
- 朝起きられる
- 運動
は得意なので、それを仕事に活かせれば楽しそうだという話になりました。
その中でも、運動が得意なことを活かしてコーチをするのがいいかもしれないという話になり、じゅきや君がはまっているBMX(バイシクルモトクロス、自転車でモトクロスのように技を繰り出す)やスケボーのコーチになるのが一番よさそうだと明るい口調で答えてくれました。
それまでは友達とただ遊ぶだけだったようですが、この話をした後は技の練習などに真剣に取り組むようになったとのことです。
真剣に取り組むことで学校での素行もある程度改善され、親御さんが学校に呼び出される頻度は減ったようです。